SATISFACTION









 WRO本部内にあるルクレツィア専用の研究室に戻ってきたヴィンセントは、部屋に一歩入ったところで足を止めた。
窓から差し込む日の光を受けて艶やかな光を宿した白銀の髪。それと対を成すような革のロングコートとブーツ。
ソファに長々と横たわり上半身と下腿をアームにもたせ掛けた招かれざる客が、非難するような視線を投げてくる。

「遅い。たかが資料集めにどれほど時間をかけるつもりだ?」

 それで母さんの助手が務まると思っているのかと挑発する相手の言葉をヴィンセントは聞き流した。
室内には誰もいないかのような態度で、紙媒体に記録されたデータをルクレツィアのコンピュータに入力するという地味な作業
を始める。
 巧妙な罠と分かっていてわざわざ引っかかる馬鹿はいない。



 ライフストリームの中を遊弋しながら決して星に帰ろうとしない強固な意志の持ち主は、暇をもてあますと思念体として地上
に姿を現していた。
ライフストリームの中を無為に漂っていると、浄化して吸収しようとする星の力に負けそうになる。

セフィロスは自我を保つための核となるものを探して時折出現するのだった。しばらく前はクラウドが退屈しのぎのターゲットに
されて酷い目に遭っていたが、最近は矛先を変えたらしい。

 「母さんと共に失われた時間を取り戻す」などと主張しているが、実のところは義父をからかって遊ぶのに無上の楽しみを
見出しているようだ。ターゲットにされたヴィンセントはいい迷惑である。


 もっともセフィロスの誕生は彼にも責任があり、ましてや想い人の連れ子とあっては無碍にもできないのだが。


 頑なに無視しようとするヴィンセントの背を見たセフィロスは薄い笑みを唇に乗せて身を起こした。
ゆっくりとした足取りで端末の前にいる義父のそばに歩み寄る。

「義父さん、腹が減った」
「思念体の腹が減るわけがない」

画面から目を離さないまま、ヴィンセントが冷淡に応じる。セフィロスは優雅に両腕を広げ肩をすくめた。

「人間であった頃の記憶が身体に残っているというわけだ」

お前にもわかるだろう、という相手を夕日色の瞳がちらりと眺める。
確かに、改造された身体は空腹を覚えない。しかし何かの拍子に食事を取りたいという欲求に駆られることはある。
栄養補給だけではなく、味や香りを楽しみ共にテーブルにつく仲間との会話に興じるのは、人間らしい営みと言えるだろう。

人間らしさから遠ざかっているセフィロスが珍しくそれを求めるのならば、応えてやるべきなのか?

そこまで考えて相手の策にはまりそうになっていることに気付いたヴィンセントは、再びそっけなく答える。

「あるのは携帯食ぐらいだ」
「…あれはパサパサしているから嫌いなんだ」

聞きなれた声よりもトーンの高い声が、聞きなれた位置よりも低いところから返ってきた。
思わず振り向いたヴィンセントの瞳に、5,6歳ほどの少年がにっこりと微笑みかける。


「義父さん、お腹がすいた」

 相手の弱点を知り尽くしたセフィロスは、もっとも効果的な攻撃を仕掛けてくる。
舌打ちをしつつも抗いきれずに腰を上げたヴィンセントの完敗だった。






「卵の殻を入れるなよ。殻座もちゃんととれ。分かっているか?ふたつあるからな」
「うるさい」

研究室の片隅にある簡易キッチンで渋々料理を始めたヴィンセントを、セフィロスが椅子の上に立って監視している。
愛らしい少年の姿と尊大な口調がミスマッチだが、これはこれで可愛いと言えなくもない。


「しろみも切ってくれ。つながったしろみは気味が悪い」
「生で食わせるとは言っていない。焼けば大丈夫だろう」
「手抜き料理には慣れていないのでな」

傲慢に言い放つセフィロスに腹を立てたヴィンセントがならば自分でやれと言い返すと、銀髪の少年はそれならWROの食堂に
食べに行くと背を向ける。

星を滅ぼそうとした災厄であるセフィロスに本部内を歩かせるわけには行かない。

片手でフライパンの中の卵をかき回しながら、もう片手でセフィロスの襟首を慌てて捕まえたヴィンセントは、ペット禁止のマン
ションでライオンを飼っているような気分になるのだった。




「予想外にうまい。もっともこの料理で味が大幅に変わることはあまりないがな」
「黙って食え」

憮然としながら濃い目に淹れたコーヒーをすするヴィンセントの前で、少年の姿のままのセフィロスは上品なテーブルマナー
で即席の料理を口に運ぶ。


スクランブルドエッグとカリカリに焼いたベーコン。保冷庫の中で萎びかけていたレタスはケアルをかけてみたらしゃっきりした
のでサラダに使っている。それに、ティファが送ってくれたお手製のジャムをのせた分厚いトーストが本日のメニューだ。

 子供の姿でいるならばとヴィンセントは意趣返しに砂糖をたっぷり入れたカフェオレを出したのだが、セフィロスはそれを
平然と飲み干した。口元に運びかけたマグカップを空中で停止させて、仕掛け人は呆然とその様子を見守る。


「…よく飲めるな」
「糖分は一番効率のよい栄養源だ。ミッション中はよく摂るだろう」
「ミッション中なら、な」

空中でホバリングさせていたカップを口に運び、ヴィンセントはかつてタークス時代に口にした携帯食料を回想した。
保存と栄養価については考えつくされていたが味はお話にならないシロモノで、同僚たちとよくこき下ろした記憶がある。

「その頃に比べると、オレたちの方がましだ」

コーヒーのお代わりをブラックで要求したセフィロスは、子供に二杯目はダメだと拒否されるとさっさと元の姿に戻った。
再度突き出されたマグカップにヴィンセントは黙ったままコーヒーを注いでやる。狭いテーブルをかこんだ元神羅の二人は、
思いがけない共通の話題に花を咲かせていた。


味にうるさいジェネシスやセフィロスが色々と注文をつけたおかげで、神羅軍の携帯食料は飛躍的な進歩を遂げた。
長期の作戦にも対応できるように様々な味のフレーバーまで開発されたという。


「当たり外れも大きかったが、一番酷かったのはバカリンゴフレーバーだったな」
「バノーラホワイト、か」
「ああ。ジェネシスは怒っていたが不味いものは不味い」

かつての親友を思い出してくすりと笑うセフィロスの表情は人間臭く、魅力的だ。外見に父親の遺伝子が殆ど影響を及ぼさなかったのは幸いだった。
セフィロスが宝条似だったら、ヴィンセントは共にコーヒーを飲む気には絶対ならなかっただろう。
ルクレツィア譲りの外見だけでも、義理の息子はヴィンセントの心に大きな揺さぶりをかけてくる。


もしジェノバが本当に古代種だったら。

セフィロスが復活した古代種として生きていたら、歴史はどのように変わっていただろう。

 卓越した戦闘能力ではなく星と会話し人の心を察する能力を彼が持っていたら、神羅製作所の進む方向を変えていたかも
しれない。

それとも、イファルナやエアリスのように神羅に利用され、不本意な人生を歩むのだろうか。

無意識のうちにセフィロスが幸福になるシナリオを模索していることに、ヴィンセント本人は気付いていない。
自分ひとりの思考に深く沈んでいた彼の心を読んだように、銀髪の美丈夫が微笑する。

「どこまでも苦労症なことだ。普通の人間ならとうに胃に穴があいているぞ」
「人間でなくて悪かったな」

揶揄に含まれたわずかな好意に戸惑って、ヴィンセントは素っ気ない返答を返す。

そこはかとなくあたたかな空気が流れたその時、二人は同時に部屋の入り口を振り返った。
彼らの鋭い聴覚が捕らえたのは、廊下を歩いてくる二人分の足音。律動的なハイヒールの靴音はそれを身につけた女性たち
の覇気と活力を伝えてくる。


まずい。

ヴィンセントは厄介な訪問者を隠す場所を探して室内に視線を走らせた。
ルクレツィアひとりなら大丈夫だが、同行者がいることが問題だ。セフィロスの存在は誰にも知られるわけにはいかない。
 ジェノバ戦役を引き起こした張本人がぬけぬけと復活していることだけでも大問題なのに、ルクレツィアに母さん母さんと
まとわりついている所を誰かに見られでもしたら、彼等の立場は非常に厳しいものになる。


「母さんだ」

 嬉しそうに立ち上がった銀髪の美丈夫を無理やり引きずって、ヴィンセントは研究室の一角にある倉庫に駆け込んだ。
彼が扉を閉めるのと、シャルアを伴ったルクレツィアが戻ってくるのはほぼ同時。
間一髪セーフだ。

「あれ?ヴィンセント、まだ帰ってきていないのかしら」

声をかけても返事がないことに、ルクレツィアは首をかしげた。


「いや、一度戻ってきたんじゃないか」

シャルアが端末のそばに置かれたファイルと、テーブルの上の皿とコップを顎で示す。

「何か緊急の用でもできたんだろう」
「ええ…」

ルクレツィアは顎に指先を当てて考え込む。
 それならメモを残していくはず。それにヴィンセントがわざわざ食事をしているのも奇妙だ。ユフィあたりが来て空腹を訴え、
その後彼を引っ張り出したのだろうか。





『さすがは母さん。鋭い読みだ』

 狭い倉庫の中で腕組みをしながらセフィロスが感心する。ヴィンセントはため息をついて相手を見上げた。
長身の彼が見上げるほどの相手というのはバレット以外にはあまり居ない。バランスのいい体格をした銀髪のソルジャーは
それほど大柄には見えないのだが、並んで立つとその堂々たる体躯がまざまざと感じられる。


『もういいだろう。さっさとライフストリームへ戻れ』
『おまえがここからのこのこ出て行くのも不自然だろう。二人がいなくなるまでつきあってやる』
『いいから消えろ』

 そっけなく言い捨てて背を向けたヴィンセントにセフィロスは意地の悪い笑みを浮かべる。
自分の存在を他人に知られたくないのは当然だろうが、あからさまに邪魔にされるのも不愉快だ。ルクレツィアの立場が悪く
なるようなことをするつもりはないが、からかうと反応の面白いこの男はとことん困らせてやりたくなる。


『冷たいな、義父さん』

扉の向こう側の気配に耳を澄ましていたヴィンセントは、いきなり後ろから抱きすくめられて不機嫌に唸る。

『何の真似だ?』
『暇だからな。抱っこの続きだ』

 二度と聞きたくない単語を耳にして、不幸な男は総毛立った。
腰に回された腕、耳元に吹きかけられる吐息に、思わず本気で肘鉄を送り込む。
呻いた相手は手を離してわざとらしく古いファイルの並んだ棚に倒れ込もうとする。演技と知りつつも放っておくわけに行かず、
舌打ちしながらヴィンセントはセフィロスを抱きとめた。
 自分の身を支える気のない頭ひとつ分背の高い相手を、音のしないように床に降ろすのは想像以上に大変だ。


『騒ぐと見つかるぞ』

棚から落ちてきた分厚いファイルを片手で優雅に受け止め、セフィロスは唇の端を吊り上げた。
ヴィンセントはたちの悪い義理の息子を仁王立ちになって睨みつける。


『仕掛けておいて何を言うか』
『仕掛ける?こんな風にか』

 足を投げ出して床に座り込んだセフィロスは、手にしていたファイルを無造作に肩の後ろに放り投げる。
即座に反応したヴィンセントは、相手の上半身に乗りかかるようにしながら右腕を一杯に伸ばした。


時間が秒以下の単位に引き延ばされる。

セフィロスはヴィンセントの身体に腕を回して動きを妨害する。
放物線を描いたファイルが頂点に達して落下を始めた。
身をもがいて左腕の自由を得たヴィンセントはソルジャーの肩パッドに手をつき、そこを支点として更に身体を伸ばす。
バラリと広がったファイルの表紙の部分が、かろうじて彼の指先にぶつかり、もう一度緩慢に上昇を始める。


だが、今度の放物線の落下地点は更に遠くだ。

体勢を立て直してファイルが床に落ちる前に受け止めようとするヴィンセントを、仰向けに寝転がったセフィロスが力任せに
引き戻す。
精一杯伸ばされた指は空をつかんだ。
そのわずか先をファイルが落下していく。


間に合わない…!

息を呑んだヴィンセントの視界を銀色の閃光が横切った。

時間が正常の速度に戻り、色彩をとりもどした世界の中で、正宗に貫かれたファイルがのんびりと揺れている。



『そんなに慌てなくとも、ちゃんと拾ってやるさ』

 一気に全身の力が抜けたヴィンセントの鼻先にファイルをぶら下げて、セフィロスは笑った。
長身の二人が狭い倉庫の中で密やかに大暴れをしているのに、物音は立っていないというのはまるで奇跡だ。

『…いい加減にしろ』

ヴィンセントは相手に馬乗りになったまま襟首をつかみ上げる。怒れる義父の顔をセフィロスは余裕に満ちた美しい笑顔を
浮かべて見返した。


『お前をからかうのは最高の退屈しのぎになるな』
『………』

 ぬけぬけと言い放つ相手にもう何を言う気も薄れ、ヴィンセントは手を離して立ち上がった。自分の反応を楽しむような相手は
無視するに限る。

その彼の耳に扉が開閉するかすかな音が届いた。女性たちは遅いランチを取りに部屋を出て行ったらしい。
気付いたセフィロスもゆっくりと身を起こす。二人は薄く開けた扉から気配を確認し、狭苦しい倉庫からようやく抜け出した。


「気付かれずに済んでよかったな」
「…よく言う」

義理の息子に振り回されて疲れ果てたヴィンセントは、放置したテーブルの上を片付けようとのろのろと歩を進める。
その身体を銀髪の美丈夫は有無を言わさずに担ぎ上げた。相手に抵抗の隙も与えず一瞬のうちに倉庫に逆戻りする。


「一体、何の真似…」

抗議するヴィンセントの口を塞ぎ、セフィロスは自分の唇に人差し指を立ててみせた。

『新手が来たようだぞ』
『ならばお前が消えればいいだけだろう』
『まあそう言うな』

 倉庫の中で密やかにすったもんだが行われているのを露ほども知らず、荷物の配達人が室内に入ってきた。
荒野をフェンリルで飛ばしてきたことが伺える、埃まみれの姿だ。


「ヴィンセント。いないのか?」

細長い包みを手にしたクラウドが室内を見渡す。

「…ここにいると聞いたんだがな」

ティファから託された新種のワインと、デンゼル、マリンからの手紙をテーブルに置いた彼の瞳が訝しげに細められた。
飲みかけのコーヒーが入ったマグカップが二つ。ブランチでもとったかのような大ぶりのプレートが一枚。

「…ユフィでも来たのか」

ルクレツィアのラボで食べ物を要求するような人物は他に思いつかない。




 セフィロスは狭い倉庫の中で腕組みをしたまま、となりのヴィンセントを軽く肩で小突いた。

『あの小娘にはいつも料理を作ってやるのか?』
『まさか』

飯を作れなどと要求されたのは、ルクレツィア以外にはお前が初めてだとヴィンセントは厭味を込めて答える。
それを鼻であしらったセフィロスは翡翠色の瞳を再び扉の向こうへと向けた。


何度も刃を交え不覚を取った相手はやはり気になる。

『…クラウド』」

独り言のように呟き、扉に向かって足を踏み出した銀髪の美丈夫の腕をヴィンセントが素早くつかんだ。

『どこへ行く』
『古い顔なじみにちょっと挨拶をするだけだ』

いかにも穏便な言葉に聞こえるが発言者が発言者なだけに、ヴィンセントが不信感をあらわにする。
ちょっと挨拶、だと?

仇敵同士の二人が顔を合わせればもちろんただで済むはずがない。


『余計なことをするな。お前がここにいることを知られると面倒だ』
『それがどうした?』

ヴィンセントの制止をセフィロスは涼やかに切って捨てる。こそこそ隠れるのはもう飽きた。少し気分転換をしたい。
そばにいる男は高い戦闘能力を持つくせにあまり本気で闘わないので、少々物足りないのだ。
そこに現れたクラウドはうってつけの玩具とも言える。

『手頃な遊び相手を見つけた。邪魔をするな』
『ルクレツィアに言いつけるぞ』

腕組みをして重々しく宣告したヴィンセントに、翡翠色の瞳が軽く見開かれた。
この上なく効果的だがとてつもなく陳腐な戦術を取った相手に、失笑するセフィロスの長い銀髪がさざ波のように揺れる。

『…情けないとは思わんのか』
『何とでも言え』

セフィロス相手に手段など選んではいられない。自尊心と引き換えに手っ取り早く効果的な切り札を使ったヴィンセントは、
渋い顔をして相手を睨む。


 ひとしきり嘲笑してからセフィロスは長い銀髪を後ろに軽く払い、扉を背にしたヴィンセントの逃げ場を奪うように顔の横に
右手をついた。
縦長の瞳孔を持った翡翠色の瞳が細められ、舌先が薄い口唇をゆっくりとなぞっていく。
舌なめずりすらも優雅に見えるのは彼の特権だろう。


『よかろう。だがそのかわりに…』

セフィロスの指先が、相手の顎を上げさせる。

『オレが満足するまで相手をしてもらおうか』

息のかかるほどそばに寄せられた秀麗な顔に、ヴィンセントの瞳が眇められた。






 不在の受取人にあててメッセージを書いていたクラウドは、乱暴に開け放たれた倉庫の扉に驚いて顔を上げた。
中から出てきたのは、行方不明になっていた張本人。

「…なんだ、いたのか。そんな所で何をしていたんだ?」
「何でもない」

ヴィンセントは不機嫌に答え、椅子の背にかけてあったホルスターを右の大腿に装着する。
その目の前に受け取り伝票が突きつけられた。

「ティファからだ。子供たちの手紙には返事を出してやってくれ」

 相手の不機嫌さに動じることなく、クラウドは淡々と用件を伝える。
巨大なトリプルリボルバーをホルスターに落とし込んだヴィンセントは、おざなりに受け取りのサインをすると使い慣れたガント
レットを左腕につけ、ファイアとバリアのマテリアをはめ込む。

予備に持ったのは殺傷力の高いマグナム弾。

 ものも言わずに手早く物騒な装備をしていくヴィンセントを、クラウドは珍しそうに眺めた。


「一体何をするつもりなんだ?」
「子守りだ」

視界を塞ぐ長い黒髪を赤い布を額に巻いて押さえマシンガンを肩にかけて、ヴィンセントはクラウドを振り返った。

「おまえは早くここを出ろ。そして当分WROには来るな」
「理由は?」

眉をひそめた相手に、ヴィンセントは短く息を吐き出して首を振る。

「知らん方がいい」

相手の返答を待たずに背の高い姿はドアの向こうへ消えた。残されたクラウドは腕を組んで首をかしげる。

「子守り…?」

ヴィンセントの言葉と行動はみごとに乖離している。
凶暴なモンスターの幼生でも飼ったのかという彼の呟きは、あながち間違いでもなかった。





 ヴィンセントはフル装備に近い姿でシミュレーションルームへと向かった。

セフィロスのデータを使った模擬訓練。3D映像によるセフィロスの姿の再現。

周りにはそう見えるはずだ。何故彼が過激なトレーニングを始めたのか不審に思うかもしれないが、まさか思念体相手に
戦っているとは思うまい。


「…まったく、面倒くさい」

いまいましげに呟いて、ヴィンセントは正宗を手にして満足げな笑みを浮かべたセフィロスの待つトレーニングルームへと足を
踏み入れたのだった。









                                                          syun
                                                       2009/05/16






なんとも今更でびっくりの11111番前後賞キリリクのSSでございます。大変長らくお待たせいたしました。リクの設定は「楽屋ネタ」ですが、
じつはコピッタさんと私にしかわからない内輪ネタも入っています(笑)個人さまへの捧げものですので、その辺はご容赦を。

セフィロスが何を考えているのか分からないお人になってしまいました。いやいや、英雄の思考など一般人にわかるはずもないのです。
そして何だかわからないままに地味に酷い目に遭っているのがヴィンさんなのでした。この人はホントに気の毒なのがよく似合います()
英雄はオレ様なのが似合うと思って頑張ってみたのですが、いかがでしたでしょうか?「ヴィンセントファンの描くセフィロスなんて、所詮この
程度よね〜」と言われそうな気がしなくもないのですが、ええ、この程度ですともと開き直ってみることにいたします(笑)でもごはん食べて
いたり倉庫の中でどたばたやっているセフィヴィンは、書いていてとっても楽しかったのでした。読む方にも楽しんでいただければ幸いです。






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